トリガーポイントとは?
目次
トリガーポイントとは何か?
トリガーポイントとは、押すと特有の痛みがあるしこりで、筋肉、筋膜、腱、靭帯などに発生します。
中でも、多くは筋肉と筋肉の間にある筋膜に存在しており、筋膜がトリガーポイントによって「厚く」て「硬く」、「滑りが悪くなる」ことによって、関節の可動を制限したり、様々なお身体の不調につながることから、トリガー(引き金)ポイントと呼ばれています。
このトリガーポイントの発生によって引き起こされる症状は、「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)」と呼ばれ、その症状は痛み、しびれといったものの他に、疲労感、むくみ、冷え、めまいなどの不定愁訴など、実に多様です。具体的な症状についてはこちらをご覧ください。
なぜトリガーポイントができるのか
トリガーポイントができる主な要因は、
- 「不動」 ⇒ 長時間同じ姿勢でいること
- 「酷使」 ⇒ 筋肉を使いすぎること
「不動」というと例えば…
- デスクワークのお仕事をしている
- 長距離ドライバー
- 長時間立ちっぱなしのお仕事をしている
なんていう方は典型的ですね。
もう一つの「酷使」はというと、
お仕事、スポーツ、趣味などでにより反復的に負荷がかかることも該当しますし、長期間に渡る酷使に限らず、「普段やらない雪かきを何時間もやった」などの短期間での急な酷使もあります。
この「不動」「酷使」の他に、ケガや外科手術による直接的な外傷、転倒やむち打ちなどによる強い衝撃がきっかけとなる場合もありますし、内臓の機能低下やストレス、食生活などの影響を受ける可能性もあります。
このように様々な要因により筋膜が硬くなりトリガーポイントが発生すると考えられています。
関連痛とは?
トリガーポイントが起こす痛みやしびれなどの症状を「関連痛」といいます。
特徴的なのは、トリガーポイントができた周辺に限らず、離れた部位にも症状を引き起こすということです。
そして、「ここにできたトリガーポイントは、この範囲に症状を出す可能性がある」という「関連痛パターン」が分かっており、身体のどの部分に症状が出ているかによって、原因となっているトリガーポイントを推定することが可能です。
下の図は、トリガーポイントが最も離れた場所に出す関連痛としてよく例に挙げられるヒラメ筋の「関連痛パターン」の一つです。
ふくらはぎの筋肉として皆さんもよくご存じの「ヒラメ筋」ですが、トリガーポイント理論によれば、ここにトリガーポイントができると頬に関連痛を出すことがあるとされいています。
過敏になったトリガーポイントを押すと、「関連痛パターン」の通りに、離れた部位で痛みやしびれを感じることもあり、上のヒラメ筋の例では、電気のスイッチを入れるかのように「ふくらはぎを押すと頬が痛む」ということもあるのです。
なぜこのように「原因」と「症状」の箇所が必ずしも同じでない現象が起こるのか、については「神経伝達経路の錯誤」などの説が言われていますが、正確には分かっていません。
私は経験則的に、別のページでご説明している筋膜のつながりが深く関係しているのではないかと考えています。
トリガーポイントが起こす多様な症状
①肩こりや腰痛、手や足のしびれなどの慢性症状
下に羅列してはみましたが…
- 頭部の症状
- 頭痛
- 歯痛
- 顎の痛み
- 肩・首の症状
- 肩こり
- 首こり
- 四十肩・五十肩
- 腕~手の症状
- 腕・手のしびれ
- 肘の痛み(ゴルフ肘/野球肘/テニス肘)
- 手首の痛み・腱鞘炎
- 胸~腰の症状
- 胸の痛み
- 背中の痛み
- 腰痛
- 臀部~股関節の症状
- 臀部の痛み
- 股関節の痛み
- 臀部のしびれ
- 脚~足の症状
- 脚・足のしびれ
- 膝の痛み
- ふくらはぎ・脛の痛み
- 足首の痛み
要はお身体に感じる一般的な「痛み」「しびれ」はすべて該当する、ということで、ここに挙げている限りではありません。
問診時に
「 “ヘルニアだから” “脊柱管狭窄症だから” しかたがないと思っている」
「肩こりはあって当たり前と思ってあきらめている」
などとおっしゃっていた患者さんが、「もっと早く来ていればよかった」と言ってくださる様子をたくさん見てきました。
同じように感じておられる方も、ぜひ一度筋膜の視点からお身体を調べてみることを強くおすすめします。
②ぎっくり腰、寝違えなどの急性症状
ぎっくり腰や寝違え、脚がつるなど、場合によっては動けなくなったりするほどの痛みを感じる急性の症状も、一般的な腰痛、首こり、脚の痛みなどと原因は同じ、筋膜等にできたトリガーポイントによるものです。
また、これらの症状は、整形外科を受診すると安静にしておくよう言われることもあるようですが、上の項目<なぜトリガーポイントができるのか>でお伝えしたように、「不動」はトリガーポイントを生じさせる主要因ですから、少しでも動かせるようなら可能な範囲で無理なく筋肉を使う、ということも早い回復のためには重要です。
③その他の意外な症状の原因にもなる
下に挙げたものはどれも、一般的にはまずは病院を受診するような症状ですから、最初からこれらの症状を改善したい、という目的で来院される方はそう多くはいらっしゃいません。
ただ、長く続く慢性症状をお持ちの方は、よくお話を伺うと、これらの症状も同時にお持ちの方が少なくありません。
- 感覚の麻痺、異常、過敏
- 平衡障害、めまい、耳鳴り
- 足腰の冷え、手足の冷え、発汗異常(汗をかきやすい、かきにくい)
- 筋力低下、関節の可動域制限
- 皮膚の異常(湿疹、シミ、ツッパリ、脱毛、ピーンと張った皮膚)
- 静脈瘤、むくみ
- 吐き気、食欲不振、摂食障害、膨満感
- 慢性の下痢、頻尿、生理痛
- 全身疲労、眼精疲労、睡眠障害
- 気分の落ち込み、感情の乱れ
腰痛を訴えて来院され、施術を重ねるごとに、生理痛が軽くなった、寝つきがよくなった、手足が冷えなくなった、などの変化を感じられる方も多いです。
④神経痛は本当は『神経』痛ではない
病院で「〇〇神経痛」と診断される症状があります。
四十肩・五十肩と同じで、症状についての明確な定義はなく、痛みやしびれのある範囲から
- 三叉神経痛
- 肋間神経痛
- 坐骨神経痛
などと言われてしまうのですが、これもほとんどの場合、トリガーポイントによる関連痛による症状です。
下の図は「小殿筋」の部位にできたトリガーポイントが起こす関連痛パターンですが、
今まで接してきた患者さんの中にも、
「この図が私の症状と同じだから、ここで治るかもと思ってきました!」
とチラシを握って来られる方が多くおられました。
それだけ、「誤診」と言えるような症例が多いということです。
さらに、「〇〇神経痛」という名称ではありませんが、同じく神経の圧迫や損傷により症状が出るとされいてる以下の疾患についても、
症状の原因は神経の圧迫や損傷ではなく、筋膜にできたトリガーポイント
である可能性が高いです。
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎分離症
- 脊椎すべり症
- 胸郭出口症候群
- 手根管症候群
- 足根管症候群
これもあくまで例ですので、ここに挙げていない「痛み」や「しびれ」を伴ういずれの症状も、一度筋膜の視点からお身体を調べてみられるべきです。